ワイのリハメモ

ワイ(理学療法士)が日々勉強した事をメモるリハビリブログ。 文献抄読、読書感想文が主体。最近は興味深いと思ったことをメモってます。

カテゴリ:文献抄読 > 呼吸器

座位困難なら側臥位で咳。


高齢者における臥位姿勢の変化が咳嗽および呼吸機能に与える影響

松本ら:第50 回日本理学療法学術大会(東京)
key words 咳嗽・高齢者・体位


【抄読】
●目的
咳嗽を行うにあたって、座位が有利であることはすでに知られている。
しかし、座位保持が困難な症例は多く、
腹臥位、半腹臥位での呼吸理学療法を行うことは多いが、
咳嗽や呼吸の困難感を訴える患者に遭遇することは少なくない。

本研究の目的は、臥位での体位変換が
咳嗽機能、呼吸機能に与える影響を検討することである。

●方法
対象
65 歳以上で呼吸器・循環器疾患のない男女6 名

方法
臥位、半側臥位、側臥位、半腹臥位、腹臥位の5 つの体位を無作為にとらせ,
その姿勢で最大努力咳嗽を行わせた。

測定項目
呼気立ち上がり時間、咳嗽時最大流量(PCF)
努力肺活量(FVC)、PImaxとPEmax
咳嗽時の胸部と腹部の拡張差

●結果
PCF:側臥位が半腹臥位よりも有意に高い結果を示した。
咳嗽加速度:側臥位が半腹臥位、腹臥位よりも有意に高い値を示した。
胸部拡張差:背臥位と比較して腹臥位が有意に低かった。
腹部拡張差:有意差なし。
その他の項目:有意差なし。

●まとめ
側臥位に比べ、半腹臥位や腹臥位で咳嗽機能が低下する。




↓以下ワイの小言

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ギャッチアップ座位のずり下がり姿勢が呼吸筋活動とエネルギー消費に与える影響

松本ら:理学療法科学 23(5):659–663,2008
keyword:ギャッチアップ座位,呼吸筋,エネルギー消費


【抄読】

●はじめに
臨床的に、離床の前段階としてギャッチアップ座位をとることは多い。
ギャッチアップ座位はファーラー位による安静位がとれるといった利点がある。
しかし時間の経過により、重力の影響から「ずり下がり姿勢」となることが欠点である。
そして、このずり下がり姿勢を自力で補正することが困難な患者は多く、
仙骨座りとなり、褥瘡の誘発、誤嚥といった二次障害が起こりうる。

仙骨部への圧がかかりにくいとされるギャッチアップ姿勢は、
背上げ60~70°、膝上げ20°と言われているが、ほとんどの高齢者では
円背、麻痺などにより結局ずり下がり姿勢となることが多い。

ずり下がり姿勢について研究した文献は少ない。
本研究の目的は、
ずり下がり姿勢時の呼吸筋活動とエネルギー消費を明らかにする
ことである。



●対象、方法
整形,呼吸器疾患を有さない健常男子21名
(身長169.9±6.9 cm,体重61.0±6.7 Kg)

対象筋(筋電図導出筋)
胸鎖乳突筋,僧帽筋,背筋,腹直筋,腹斜筋
健常人では働きにくい呼吸補助筋群を導出するため、
ノーズクリップを利用した。

比較した姿勢
背臥位
背上げ60°膝上げ20°(姿勢1)
背上げ60°膝上げなし(姿勢2)
ずり下がり姿勢(姿勢3)

これらの姿勢にて背臥位とそれぞれの姿勢における
筋活動を比較した。

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また、簡易熱量測定を行った。
測定項目
エネルギー消費量(Kcal/m)
分時換気量(VE/m)
呼吸数(RR/m)
呼気中酸素濃度(FeO2/m)



●結果

吸気運動時の筋活動
僧帽筋活動が、姿勢1に比べ姿勢3で有意に高値となった。
腹直筋活動が、姿勢1、2に比べ姿勢3で有意に高値となった。

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呼気運動時の筋活動
僧帽筋活動が、姿勢1に対し姿勢2で有意に高値となった。
背筋活動が、姿勢1と比べ姿勢3にて有意に低値となった。

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簡易熱量測定
エネルギー消費が、姿勢2に対して姿勢3で有意差に高値となった。

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その他項目については、有意差はみられなかった。


●考察

何故、ずり下がり姿勢は呼吸筋活動に影響を与えるか。
ずり下がり姿勢になると脊柱屈曲,骨盤の後傾に伴う胸郭の平坦化が起こる。
さらに腹部は圧迫され腹腔面積は縮小化する。
このため呼吸による横隔膜腱中心の下降,上昇は腹部臓器によって妨げられ
呼吸筋活動に影響を与えると考える。

僧帽筋、腹直筋の活動増加
呼吸運動時の僧帽筋・腹直筋活動の増加から、
ずり下がり姿勢では安静呼気であっても
腹直筋、僧帽筋(肩甲骨下制による腹圧上昇)の活動が必要となり、
エネルギー消費量が上昇すると考えられる。

吸気時の背筋の活動低下
吸気時に起こるはずの、
脊柱伸展を伴う胸郭拡大と横隔膜の下降が
胸郭の平坦化と腹部臓器の圧迫により制限されるためと考えられる。
有意差はないものの、その他の吸気補助筋の筋活動が上がっていることから、
背筋の代わりに代償的に働いている可能性もある。


●まとめ
ギャッチアップ(ファーラー位)は安静肢位として用いられるが、
ずり下がり姿勢はむしろ筋活動の増加、エネルギー消費を増加する不良姿勢である。



↓以下ワイの小言
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『仙腸関節をいじれば、呼吸が楽になる。』
↑胡散臭い広告じゃないです。


仙腸関節の動きが呼吸機能に及ぼす影響について
-筋骨格系のつながりからの考察-


小西ら:理学療法基礎系44, 第42回日本理学療法学術大会

key word:仙腸関節、胸郭拡張差、運動連鎖

【抄読】

●はじめに
呼吸器疾患患者に仙腸関節モビライゼーションを試行すると、
酸素飽和度や胸郭の動きが改善し、
呼吸苦が減少する場面に多々遭遇する。
仙腸関節が胸郭拡張差に及ぼす影響について検討する。

●対象、方法
健常男性11名に対し、
仙腸関節モビライゼーション前後の胸郭拡張差を測定した。
胸郭拡張差は、①腋窩レベル、②剣状突起レベル、③第10肋骨レベルで測定。
モビライゼーションは左右仙腸関節に①起き上がり運動、②うなずき運動を3回ずつ実施。

●結果
全てのレベルで胸郭拡張差の改善が見られた。(p<0.05)
(実測値の記載なし。)

●考察
仙骨うなずき運動により第5腰椎は伸展する。
腰椎伸展により横隔膜の腰椎部である右脚・左脚が下方へ牽引される。

また、仙骨の起き上がり運動により寛骨は外旋-内転する。
それに伴って、大腰筋は弛緩し、大腰筋と筋連結をもっている横隔膜も弛緩する。
 
よって、仙骨のうなずき運動により横隔膜全体は下方へ牽引され、
仙骨の起き上がり運動により弛緩が促されることになる。

仙骨のうなずき-起き上がり運動により
横隔膜の収縮-弛緩がスムーズに行われていると考えられる。




↓以下ワイの小言
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排痰能力を判別するcough peak flow の水準
―中高齢患者における検討―

山川ら:人工呼吸 第27 巻 第2 号 260 〜266 頁(2010 年)

キーワード:cough peak flow,排痰能力,中高齢患者


【内容まとめ】
 
●はじめに
呼吸器合併症予防の面から、医療スタッフが咳嗽力を評価・把握することは重要だが
実際の臨床では、咳嗽力を外見から経験的に判断していることが多く、客観性に欠ける。

咳嗽時の最大呼気流量(cough peak flow:以下、CPF)と排痰能力の関係を明らかにし、
排痰能力を判別するためのCPF 水準を提示することを目的とした。

●対象
周術期における呼吸訓練の指示があり、リハビリ実施中の
中高齢の入院患者646 名(男性435 名、女性211 名)、

疾患の内訳は、呼吸器360 名、循環器120 名、消化器・代謝128 名、
運動器20 名、神経18 名(疾患が重複する症例多数)

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●方法
症例を、排痰可能群(446名)・排痰不可能群に大別し、
排痰不可能例はさらに、吸引必要例(83例)と吸引不要例(117例)に細分化した。
これらの症例のCPFを、測定肢位は座位、不安定な症例は車椅子座位にて測定した。

●結果
CPF は自己排痰可能例、気管吸引不要例および必要例の順に低値を示し、
排痰能力の低下に伴って有意な低下を認めた(p<0.05)。
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図2のROC曲線より、自己排痰の可否を判別するCPF 水準は、
感度81.2%、特異度94.5%を示す240L/min であった。
(神経疾患患者を対象とした先行研究では270L/min)

また、図3のROC曲線より、気管吸引が必要となるCPF 水準は、
感度77.1%、特異度82.9%を示す100L/min であった。


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自己排痰の可否を判別は240L/min
気管吸引の必要性の判断は100L/minがCPF水準となりうる。



以下ワイのしょうもない小言。


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結構内容省いてます。


人工呼吸器離脱直後の離床がPeak cough flowに与える影響

平澤 純ら:日本理学療法学術大会 2011(0), Da079-Da0979, 2012

key word:
離床 Peak cough flow 

【内容まとめ】
人工呼吸器離脱後の患者の呼吸器合併症予防には自己排痰能力が重要であり、
自己排痰には強い咳嗽力が必要である。
咳嗽力指標に、
最大呼気流速を測定するPeak cough flow(以下PCF)が用いられている。
先行研究より健常者におけるPCFは、離床により増加することが判明している。
人工呼吸器離脱後の患者に対する離床とPCFの変動についての研究を行った。

ICUにおける人工呼吸患者13名
(心臓血管手術後9名,心不全2名,消化器外科術後1名,重症肺炎1名)を対象にし、
抜管基準には自発呼吸トライアルによる人工呼吸器離脱プロトコールを用いた.

方法は抜管後3時間以内に(1)背臥位,(2)45度坐位,(3)端坐位直後,(4)離床後端坐位を行い、
その際のPCFを測定。離床は立位,足踏みまで実施。

結果は、PCFは背臥位の125.1L/分と比較して
45度坐位は133.8L/分、端坐位は157.6L/分、離床後端坐位は175.0L/分と
いずれもstep up前条件と比べ有意に高い結果となった。(p>0.05)

人工呼吸器離脱後の患者においても、健常者と同様、離床によりPCFが増加することが伺える。


以下ワイのしょうもない小言。

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