ワイのリハメモ

ワイ(理学療法士)が日々勉強した事をメモるリハビリブログ。 文献抄読、読書感想文が主体。最近は興味深いと思ったことをメモってます。

カテゴリ: 文献抄読

変形性股関節症患者に対する筋力トレーニングが
歩行時の運動学的・運動力学的特性に与える効果


【抄読】
股OA患者が呈する特徴的な歩容異常であるトレンデレンブルグ・ドゥシャンヌ徴候は、
原因として股関節周囲筋力の低下がよく指摘され、臨床でも筋トレが運動療法として選択されることが多い。

股OA女性患者46名を対象とし、
高速度トレーニング群(以下HV)と低速度トレーニング群(以下LV)に分けトレーニングを実施。
介入前後に、下肢筋力測定・疼痛評価・歩行解析を行った。

下肢筋力は患側股関節外転・伸展・屈曲と、膝伸展を測定した。

結果として、下肢筋力トレーニングによりHV群、LV群ともに
同程度の筋力増強と疼痛改善が認められた。
また歩行解析では、股関節伸展角度に改善が認められた。

しかし、体幹側屈角度や骨盤側方傾斜角度は変化は見られなかった。

まとめ
股OA患者に対する股関節周囲筋トレーニングは
高速、低速ともに筋力増強・疼痛軽減の効果が見られ、
歩行時の股関節伸展角度改善から歩行速度の改善が認められる。
しかし、トレンデレンブルグ徴候・ドゥシャンヌ徴候といった
特徴的な歩容異常の改善には至らない可能性がある。


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歩行開始動作とステップ動作における先行随伴性姿勢調節の比較

萩原ら:第50 回日本理学療法学術大会(東京)

key words 歩行開始動作・ステップ動作・先行随伴性姿勢調節

【抄読】
❍はじめに
歩行開始動作(Gait initiation:GI)は、
定常歩行と異なる姿勢制御が要求され、苦手とする患者も多い。
部分練習としてStep動作を臨床的に用いることがあるが、
単一動作のStepと、連続動作のGI先行随伴性姿勢調整(APA)は同様とは考えにくい。

GIStepAPAの違いについて検討した。

❍方法
健常男性13名に対し、
GIStepでの足圧中心(COP)の移動を測定した。

❍結果
GIStepに比べ、COPの後方変位が有意差に大きかった。
側方変位には有意差は認めなった。

早い速度でのStepは、通常速度に比べ、後方変位が有意に大きかった。

❍考察
各動作の違いは、前後方向のAPAであることが明らかとなった。
Stepは単一の運動であるのに対し、GIは連続的により大きな前方推進力を必要とするため、
前方への回転モーメントを生み出すCOP後方変位が見られたと考えられる。

❍まとめ
GIStepにおける姿勢制御は厳密には違っている。
GI改善のための介入として、Step練習だけでは不十分
実際にGIも行う必要がある。

また速いStepではCOP後方変位が大きくなるため、
GI改善のためのStepは速い速度の方が有用である。



Light Touch 効果は感覚運動皮質領域と後部頭頂皮質領域の脳活動と関係する

石垣ら:第50 回日本理学療法学術大会(東京)

【抄読】

●はじめに
立位姿勢の安定化に関与しない程度の力(1N以下)で
固定点に指先で触れると姿勢動揺は減少する。
これをLight Touch(LT)効果という。

LT効果には大脳皮質の関与が示されているが、実際の脳活動は明らかでない。
本研究の目的は、LT効果と脳活動の関係を調べることである。

●方法
対象
健常者13名(平均年齢23.7±4.1 歳)

測定肢位
閉眼閉脚立位で左上肢は体側下垂位とし,右上肢は肘関節屈曲90̊ で示指伸展位とした。

条件
Control(C)条件:身体に注意し揺れないように立つ
L条件:右示指に注意し揺れないように、固定点にLT を行う
Sensory touch(S)条件:右示指に注意し、自己の姿勢動揺を反映した非固定点に接触する
Attention(A)条件:何にも接触せず右示指にのみ注意する

各条件に寄与する要因は、
L 条件は固定点接触,感覚入力,指先への注意
S 条件は感覚入力,指先への注意
A 条件は指先への注意である。

●結果
L条件におけるLTは全て1Nを超えなかった。
姿勢動揺:L 条件のみC 条件に比べ有意な実効値面積の減少を認め(p<.01)、
脳活動:L 条件の左感覚運動皮質領域のみ有意なHighα 成分の減衰を認めた(p<.05)。

LT効果と左感覚運動皮質領域に有意な負の相関を認め、
左後部頭頂皮質領域では有意な正の相関を認めた。

●裏付け
Highα 成分の減衰は運動に関連した脳活動とされる(Pfurtscheller, 1997)
LT 効果は接触点への空間定位により得られる(Rabin, 2008)
空間定位には後部頭頂皮質が関係する(Parkinson, 2010)

●まとめ
LTにより姿勢動揺が有意に減少する。
対側感覚運動皮質領域の減衰と、対側後部頭頂皮質の興奮が関与する。
LT効果に対する基礎的知見を示した。



↓以下、ワイの小言
LT効果自体初めてみたので、ちょこっと調べて追記してます。
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座位困難なら側臥位で咳。


高齢者における臥位姿勢の変化が咳嗽および呼吸機能に与える影響

松本ら:第50 回日本理学療法学術大会(東京)
key words 咳嗽・高齢者・体位


【抄読】
●目的
咳嗽を行うにあたって、座位が有利であることはすでに知られている。
しかし、座位保持が困難な症例は多く、
腹臥位、半腹臥位での呼吸理学療法を行うことは多いが、
咳嗽や呼吸の困難感を訴える患者に遭遇することは少なくない。

本研究の目的は、臥位での体位変換が
咳嗽機能、呼吸機能に与える影響を検討することである。

●方法
対象
65 歳以上で呼吸器・循環器疾患のない男女6 名

方法
臥位、半側臥位、側臥位、半腹臥位、腹臥位の5 つの体位を無作為にとらせ,
その姿勢で最大努力咳嗽を行わせた。

測定項目
呼気立ち上がり時間、咳嗽時最大流量(PCF)
努力肺活量(FVC)、PImaxとPEmax
咳嗽時の胸部と腹部の拡張差

●結果
PCF:側臥位が半腹臥位よりも有意に高い結果を示した。
咳嗽加速度:側臥位が半腹臥位、腹臥位よりも有意に高い値を示した。
胸部拡張差:背臥位と比較して腹臥位が有意に低かった。
腹部拡張差:有意差なし。
その他の項目:有意差なし。

●まとめ
側臥位に比べ、半腹臥位や腹臥位で咳嗽機能が低下する。




↓以下ワイの小言

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末期変形性膝関節症患者の足踏み運動中のラテラルスラストにおいて
膝内転運動は小さい:3D-to-2D registration 法


星ら:第50 回日本理学療法学術大会(東京)
key words 変形性膝関節症・キネマティクス・ラテラルスラスト


【抄読】
●目的
変形性膝関節症に見られるLateral Thrust(以下スラスト)は、
痛み、OA進行リスク、マルアライメントなどと関連性があると報告される。
しかし、微細な膝関節のキネマティクスは未報告である。
本研究の目的は
末期OA患者のスラスト時の微細な膝キネマティクスを明らかにすることである。

●対象、方法
人工関節置換術施行予定の末期膝OA 患者(17名21膝)
立位足踏み運動の際の様子をX線で撮影し、
3D-Doctorを用いて3D化、分析した。

●結果
1)キネマティクス
膝内反・ 脛骨外旋角度:変化なし
大腿骨に対し脛骨は有意に外側偏移した。

2)近接距離
脛骨高原から内・外側大腿骨顆の距離:内側が0.7±1.2 mm,外側が1.5±1.6 mm増加した。
増加量は大腿骨外側顆の方が内側顆に比べと有意に大きかった。

●まとめ
スラストは膝内転よりも、脛骨の外側偏移大腿骨外側顆のリフトオフにより生じている。
→末期OA患者に見られることがある、外側脛骨隆起の摩耗と関連?



↓以下、ワイの小言
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